相続人が遠方にいるときの相続手続きはどう進める?郵送・委任でできることを解説

相続人が遠方に住んでいる場合でも、お互いに連携したり、専門家へ委任したりすることで相続手続きを問題なく進めることが可能です。
今回の記事では、基本的な相続手続きの進め方や進める上での工夫、司法書士に依頼するメリットについて解説します。
1.相続人が遠方にいる場合でも、手続きは問題なく進められる
遠方に住む相続人がいても、相続手続きは郵送や委任によって進めることが可能です。基本的な手続きの流れと注意点を整理しておきましょう。
1ー1.基本的な相続手続き:会わずに済む相続手続きは意外と多い
相続手続きには、相続人同士が直接会ってやり取りをせず、郵送や委任状によって進められるものが多くあります。
一般的に、必要な書類が揃っていれば支障なく進めることができるといえるでしょう。
以下は、一般的な相続手続きの流れです。
- 相続人の調査、確定(戸籍謄本類収集)
- 相続財産の調査・把握
- 遺産分割協議の実施、遺産分割協議書の作成
- 不動産などの名義変更や金融機関などの解約手続き
- (必要に応じて)相続税の申告
ただし、実際の相続手続きでは、戸籍謄本など原本の提出が求められる場面も多く、残念ながら、オンライン上のやり取りだけで完結させることは難しいのが現状です。
そのため、多くの場合は郵送などによる書類のやり取りが必要となります。
1ー2.段取りを誤ると時間も手間もかかる
相続人同士の居住地が離れている場合でも相続の手続きを進めることは可能ですが、一方で、相続人間での連絡が滞ってしまうと、書類の回覧や署名捺印に時間がかかってしまい、手続き全体が長期化する恐れがあります。
相続人が遠方にいる場合は、効率的な進行管理が欠かせません。
相続手続きの全体フローを確認し、進めていく必要があります。
2.相続人を確定するには?戸籍謄本の集め方と注意点
相続手続きを進めるにあたって、まずはじめに相続人調査を行う必要があります。
相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集することで調査ができます。
また、本籍地が離れていても、郵送や広域交付制度などを利用することで戸籍謄本の収集が可能です。
2ー1.本籍地が遠方であっても、戸籍謄本は郵送で取得できる
亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて収集するとき、戸籍謄本のあった各自治体へ出向く必要はありません。
戸籍謄本類は郵送請求することができ、また、2024年3月1日よりスタートした「広域交付制度」を利用することで、近隣の自治体の窓口でまとめて収集することもできます。
【広域交付制度】
- 本籍地以外の市区町村で戸籍謄本取得ができる
- 戸籍の附票は対象外
- 窓口交付のみで郵送請求不可
- 兄弟姉妹からの請求不可
広域交付は窓口でのみ対応しており、受付時間に制限があることもあります。
また、兄弟姉妹の場合は取得ができないなどの制限もあるため、詳しくは取得予定の自治体窓口にお問い合わせください。
広域交付を利用しなくても、従来通り、本籍地の役所へ郵送請求すれば、遠方でも戸籍謄本の収集は可能です。
2ー2.司法書士に依頼すれば全国の戸籍謄本収集を一括対応可能
亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本収集は相続人自身で進めていくこともできますが、郵送請求では、時間と手間がかかります。
また、改正原戸籍や戸主制度のある時代の古い戸籍謄本は判読が難しく、取得漏れのリスクもあります。
司法書士に依頼することで、必要な戸籍謄本を漏れなく収集できます。
また、相続登記に使用する相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成も含めて依頼可能です。
3.遺産分割協議も相続人同士が離れていても進めることができる
遺産分割協議は、相続人同士の住まいが離れていても、要件を満たした遺産分割協議書を作成することで有効に成立します。
なお、有効な遺産分割協議書とするには、相続人全員の実印による押印と印鑑証明書の添付が必要です。
3ー1.書類の郵送で対応する際の基本的な流れ
遺産分割協議書を有効に成立させるために、書類を郵送でやり取りし、各相続人に押印をしてもらう必要があります。
流れとして、まずは、相続人全員で遺産の分割方法について話し合い、合意内容をもとに遺産分割協議書を作成します。
その後、遺産分割協議書を回覧、もしくは個別に送付し、押印をしてもらいます。
なお、1枚の遺産分割協議書に全員が署名・押印する必要はなく、同一の内容であれば、個別に押印しても有効な遺産分割協議書として成立します。
また、将来的なトラブルを避けるためには、署名については印字ではなく本人が自署するとよいでしょう。
3ー2.相続人同士で直接やり取りする場合の注意点
相続人間で直接やり取りを行う場合、意思の伝達や書類の管理に時間や手間がかかることがあります。
特に、相続人のなかに高齢の方や、日中仕事をしている方がいる場合は、連絡のタイミングが合わないといった理由で進行が遅れることがあります。
どのタイミングであればやり取りがスムーズにできるか、事前に確認し、連携を取る必要があるといえるでしょう。
3ー3.司法書士に依頼することで効率的に手続きを進められる理由
司法書士に相続手続きを依頼すると、書類の送付や記入案内、進捗管理などを一括して対応してもらえます。そのため、相続人全員と連携しながら、同時進行でスムーズに手続きを進めることが可能です。
また、司法書士は法律の専門家として、手続きの流れをわかりやすく説明し、必要に応じて的確なアドバイスができます。
相続人の心理的な負担や不安を軽減できる点も、大きなメリットといえるでしょう。
ただし、相続人同士のやりとりに司法書士が介入し、代理で交渉を行うことはできません。こうした行為は非弁行為に該当するため、法律上、司法書士が行うことは禁じられています。
ほかの相続人が遠方に住んでいたり、連絡が取りづらい状況であっても、紛争性がなければ、司法書士へ依頼することで手続きを円滑に進められるケースが多くあります。
4.不動産登記・口座解約などの相続手続きも郵送で可能
相続による不動産登記や銀行口座の解約手続きは、郵送や委任によって進めることが可能です。
ただし、手続き内容によって必要書類や対応方法が異なり、なかには窓口でのみ対応可能な手続きもあるため、事前確認や、専門家のサポートをうまく活用して進めていきましょう。
4ー1.不動産登記は「遺産分割協議書+戸籍謄本+印鑑証明」で完了
相続による不動産の名義変更(相続登記)は、書類が整えば、郵送やオンラインでの申請が可能です。
ただし、戸籍謄本類などの添付書面は窓口もしくは郵送で提出する必要があり、オンラインのみで完結ができません。
相続登記ではおもに以下の書類が必要となります。
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 名義人となる人の住民票
ただし、ケースによってはそのほかの公的書類などが求められる場合があります。
4ー2.銀行口座の解約は金融機関ごとの書式対応が必要
金融機関によって提出書類や書式が異なるため、相続人自身で対応する場合は多くの手間がかかります。
また、相続センターなどの対応窓口の営業時間や提出先の確認も必要です。
提出書類として求められる印鑑証明書は、発行から3か月や6か月といった使用期限を設けている場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
4ー3.手続きのバラつきを吸収するには専門家への依頼がおすすめ
司法書士へ依頼することで、各金融機関の様式に応じて書類を整備し、郵送手配を一括で管理できます。
提出書類の収集から、記入が必要な書面の作成、金融機関への提出を一元的に依頼でき、相続人の負担は大幅に軽減されるといえるでしょう。
拓実リーガル司法書士法人では、相続税申告のための残高証明書や取引履歴(取引明細)の取得にも対応していますので、心配な方は一度ご相談ください。
5.相続人が遠方にいる場合の手続きをスムーズに進める3つの工夫
遠方にいる相続人との手続きをスムーズに進めるためには、事前の工夫と役割分担が重要です。
相続手続きの効率化に役立つ3つの実践的なポイントを解説します。
5ー1. 代表者(まとめ役)を決めて窓口を一本化する
まずは、相続人の中で一人「まとめ役(相続人代表者)」を決めて、他の相続人との連絡・書類送付の窓口を統一することで混乱を防げます。
通常、相続の手続きでは複数の手続きを同時進行することになるため、複数人でバラバラに取り掛かってしまうと、重複する手続きが出てくるリスクもあり、非効率となる可能性が高いです。
効率化するためにも、相続人の代表者を最初に決めておきましょう。
5ー2.書類の回覧順やスケジュールをあらかじめ決める
相続人同士だけで相続手続きを進める場合、遺産分割協議書だけでなく、口座の解約などでも書面に署名、押印しなければならない場面が出てくる可能性があります。
- 誰から先に書類を送るか(回覧の順番)
- 何日以内に返送するか
特に書類のやり取りを複数回郵送でする場合、上記のようなルールを事前に共有しておくことで、やりとりがスムーズになります。
5ー3.説明や書類送付は専門職に任せて心理的ハードルを下げる
司法書士といった相続手続きの専門家のフォローがあることで、手続きに慣れていない人でも安心して手続きを進めることができます。
遺産分割協議書や相続登記といった、法律や登記の専門知識が必要となる書面作成や手続きにおいては、重大なミスを防ぐためにも専門家の力を借りることをおすすめします。
6.遠方に相続人がいる場合、司法書士に依頼するメリットとは?

相続人が遠方にいる場合、司法書士に依頼することで手続きを円滑かつ効率的に進められます。
具体的なメリットを紹介します。
6ー1.説明・郵送・連絡窓口まで、まとめて一括で代行可能
書類の作成から郵送手配、相続人への説明、進行管理まで、すべてに一括で対応できる点は、相続に詳しい司法書士の強みといえるでしょう。
特に、以下の人におすすめです。
- 仕事が忙しい
- 相続税申告の期限が近い
時間が限られている方にとってはとくにメリットが大きいといえます。
6ー2.「とりまとめ役」の負担を軽減しながら進められる
相続人代表として動く方のストレスや負担を軽減しながら、相続手続きの支援が可能です。
連絡のつきにくい相続人に対しても、どのような対応や手続きができるか、長年の経験からアドバイスすることができます。
6ー3.相続人ごとの手続きサポートも可能
生活時間帯や連絡手段が異なる相続人に対しても、個別に対応ができるため、理解度や反応の差を吸収しながら手続きを進められます。
7.遠方に相続人がいる相続は、相続の専門家である司法書士に任せてスムーズに
相続人が離れて暮らしていても、郵送や委任を活用し、段取りを工夫することで手続きは十分対応可能です。
また、司法書士に依頼することで、よりスムーズかつ、確実に相続手続きを進めることができます。
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