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中央道・談合坂スマートICの開通案件01 ~はじまり~

 

過去最大級の相続人出現(総勢518名)相続登記、完了までの7年間

明治時代から放置されていた13名の相続人から発生した巨大なファミリーツリー

 

1.はじまり

私は2010年12月に東京都立川市で開業をした、ごく普通の司法書士だった。この前代未聞の相続登記依頼が来たのは、2013年秋。お付き合いのある山梨県の土地家屋調査士さんから「松本さん、たくさん相続人がいる土地の相続登記、できる?」と連絡がきた。特段忙しくもなく、どんな案件にもチャレンジしていた私は、「はい、できますよ!任せてください。」と安請け合いしたのだった。

それは山梨県上野原市と中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)八王子支社の共同事業、中央自動車道「談合坂スマートインターチェンジ」の設置予定現場にあった土地の相続案件だった。(リンクは当時の記事。)

上野原市役所該当ページより。

談合坂スマートインターチェンジについて

スマートインターチェンジ設置促進協議会「スマートインターチェンジ実施計画」(国土交通省許可)

開通:2020年(令和2年)5月24日(日曜日) 15時

設置場所:山梨県上野原市 E20中央自動車道(上野原インターチェンジから大月インターチェンジ間(上野原インターチェンジから7.6キロメートル、大月インターチェンジから12.5キロメートル))

設置効果・設置目的:東京への通勤圏が拡大し、周辺住宅地から名古屋・長野方面へのアクセス性も向上。大規模災害時の物資輸送の迂回路としての利用や、高次医療施設へのアクセス時間が短縮されることから、スマートインターチェンジ周辺地域を中心に安全・安心の確保が図られる。スマートインターチェンジを新たな玄関口とした観光振興や、物流の効率化による各種産業の振興などが図られる。

 

上野原市では2009年12月に取り組みが開始され、2020年5月に完成・開通となった。弊所が関与したのは、2013年10月から2020年9月(残務処理もあったため)。

公共の利益となる事業に必要な土地を収用または使用する際は、土地収用法に基づいて損失の補償などをし、事業が進行していく場合が多いが、この件はその適用を受けないということで、通常の相続登記と同様の手順を踏んで進めていくこととなった。

登記簿を見せられて驚いた。対象の土地は何筆もあったが、事業のメインとなる土地2筆を甲土地と乙土地とすると、甲土地はA~Jの11名とK、そして乙土地は同じくA~Jの11名とⅬが共有しているという13名の村人たちの名義で登記されており、なんと明治33年から権利変動なくストップしたままだったのだ。

昔の人は子だくさんだったので、少なく見積もって13人の名義人たちの子どもがそれぞれ5人いたとしてまず65人。65人がそれぞれ3人子どもを作ったとして195人。またさらに3人子どもが生まれたとして585人となるのではないか?と、あきれて笑ってしまう(実際には、昭和20年3月までの相続に関しては家督制度があったため、家長となるひとりが相続するだけのシンプルな相続関係になるが)。

2.相続人調査 ~犬神家の一族のようなことも?!古き日本の相続関係~

まずは相続人調査から開始することになり、ひたすら戸籍を収集する。通常、司法書士は依頼者から登記業務の依頼を受けると、職務上請求書を使用し、職権で戸籍謄本類を取得することができるのだが、今回は公共事業という特別なケースにあたり、事前に東京司法書士会に事業内容を説明して許可を得た上で開始し、毎回各自治体に上野原市からの事業説明書を渡しつつ戸籍を収集するという形をとった。

こういったケースは珍しいらしく、普通はこうした大規模かつ公共性の高い登記業務は、公共嘱託登記司法書士協会がおこなうことが多いのだが、今回は弊所が一手に請け負うという形をとったため、毎回戸籍請求の際に自治体に説明を要した。

ここで、すでにマンパワーが必要だとなり、職員を1名雇用、増員する。ひたすら戸籍収集マシーンとなってみんなで戸籍を集め続ける。戸籍取得請求書の取得理由について、「被相続人●●の相続登記申請書の添付書類として必要。」と書くのが大変で、あらかじめそのようなゴム判を作る。そして戸籍が集まれば、それを相続関係図を作成するソフトに入力していき、少しずつファミリーツリーが出来上がっていった。

戸籍謄本類の山の中に、様々な発見があり、勉強になった。例えば、戦争中長男が戦死したとの記載があったあと、その長男のお嫁さんが二男と結婚しているとか、昔は子どもが生まれてすぐに亡くなることがこんなにも多かったのか、とか、養子縁組が多用され、深い理由があるのだろうが、自分の子を親の養子としたり、いとこ同士の結婚も多かった。結婚と離婚、復縁を4回も繰り返しているかたもいたし、だんだん時代が現代になってくると、村から出て日本中に一族が散らばり始め、海外に住所を置くかたも増えてきたのがよくわかった。

戸籍謄本類は、何百通にも上り、取得は弊所の負担でまずはおこない、年度の終わりに精算していたため、負担額が辛かった。事務所には、電話帳の厚さの戸籍謄本類の束が積みあがっていった。さらには、事業が後になっていくにつれ、さらにもう一人専用の職員を雇用することになる。

3.「早くしなきゃ」と焦る気持ち ~増え続ける相続人~

子孫が多く複雑な家系とそうではない家系があり、13家系すべての相続人を洗い出すことよりも、早めに現在の相続人がわかりそうな家系から遺産分割協議をまとめていってしまう戦法をとることにした。そうでないと刻一刻と時が経つにつれ、次々に相続人が亡くなり、新たな相続人が出現し続けてしまうからである。

遺産分割協議をしないまま次々相続人が死亡していくと、数次相続も発生し、子どもだけでなく血のつながりがない配偶者にも相続権が及ぶ。また、子どもがいない夫婦の場合、配偶者のきょうだいたちへと相続権が広がっていき、甥姪まで含めると10人以上相続人が増加することが珍しくない。それに相続人たちがどんどん老いてゆき、判断能力がなくなってしまうと、遺産分割協議ができなくなる。(続く)

>>中央道・談合坂スマートICの開通案件02

拓実リーガル司法書士法人

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