自筆証書遺言を開封する際の手続きと注意点
遺言書には3つの形式があり、その中で「自筆証書遺言」は開封に注意が必要な遺言書といえます。
今回の記事では、遺言書の3つの種類の説明に合わせて、自筆証書遺言を開封する際の手続きと注意点について解説していきます。
1.遺言書の開封ができる遺言書の種類とは?
遺言書を自宅や貸金庫などで発見した場合、ただちに中身を見てよいかどうかは、その遺言書の種類によって異なります。
遺言書が「自筆証書遺言」であった場合、開封には注意が必要です。
まずは3つの遺言書の形式ごとに、発見してすぐに開封できるかを解説します。
1ー1.自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言を見つけた場合、封を開けず、家庭裁判所での検認手続きを受けましょう。
自筆証書遺言の検認手続きは民法によって定められており、勝手に封を開けてしまうと5万円以下の過料が科される可能性があります。
自筆証書遺言を発見した場合は、家庭裁判所へ遅滞なく、遺言書の検認の申立てをするようにしましょう。
家庭裁判所での検認手続きは、司法書士へ申立て書類の作成を依頼することができます。
自身での手続きに不安がある場合は、司法書士への相談がおすすめです。
なお、自筆証書遺言のなかでも、法務局の保管制度を利用して保管していた場合は、遺言書の検認手続きは不要です。
ただし、検認の手続きは不要ですが、遺言書の有効性を証明するわけではありませんので注意が必要です。
1ー2.公正証書遺言の場合
公正証書遺言を見つけた場合、家庭裁判所での遺言書検認は不要であり、内容もその場で確認して構いません。
公正証書遺言とは、公証役場において、公証人の立会いのもと、遺言者が作成した遺言のことをいいます。
公証人によって内容が確認されているため高い法的有効性があり、また、公証役場にて原本が保管されているため、遺言書の中でもっとも安全で確実な形式といえるでしょう。
また、公正証書遺言が作成されているかどうかは公証役場で調べられます。
被相続人が公正証書遺言を作成していたはずだが遺言書が見当たらないといったときは近くの公証役場に問い合わせてみましょう。
なお、公正証書遺言の原本閲覧は200円/1回、公正証書遺言の謄本は250円/1ページかかります。
1ー3.秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言は遺言の内容を秘密にしたまま、内容を記した書面を封筒へ入れ、遺言書に押印したものと同じ押印をして封をし、公証人と証人2人の前で公正証書の手続きをすることで作成する遺言書です。
秘密証書は自筆証書遺言と同じく、家庭裁判所での検認が必要になります。
秘密証書遺言は公証人の前で作成しますが、公証人は内容を確認しないため、開封まで内容を秘密にすることができる点がメリットです。
ただし、遺言書の法的有効性については本人の記した内容に依拠するため、無効となる恐れもあります。
2.自筆証書遺言で必要な遺言書の検認とは
自筆証書遺言や秘密証書遺言で必要となる遺言書の検認手続きとは、家庭裁判所で行う手続きであり、申立てが必要です。
遺言書の検認は、遺言書を発見した相続人以外の相続人にも遺言書の存在を知らせるとともに、検認日に遺言書の内容を確認することで遺言書の偽造や変造を防ぎます。
2-1.家庭裁判所へ遺言書検認の申立てをする
遺言書の検認申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
遺言書の検認の申立てがされると、申立人のほかの相続人へ裁判所から検認の期日について通知がなされます。
検認の日当日は申立人以外の相続人については出席は任意であり、申立人が出席することで遺言書の検認手続きをすることが可能です。
申立人が遺言書を持参し、検認手続きを受けることで、遺言書が開封できます。
また、検認後、検認済証明書を発行してもらうことで遺言の執行が可能になります。
2-2.家庭裁判所への遺言書検認のための必要書類
遺言書検認の申立てでは、一般的に以下の書類が必要になります。
- 遺言者の出生から死亡時までの戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
- 相続人の現在の戸籍謄本
遺言者の子供や孫で死亡している人がいる場合、その人の出生時から死亡時までの戸籍謄本も必要です。
そのほか、相続人の相続順位によって必要書類が変わる可能性があるため、詳細は司法書士などの専門家に依頼する際に確認するとよいでしょう。
3.自筆証書遺言を誤って開けてしまった場合は?
自筆証書遺言を遺言者の死後、相続人などが見つけた場合、封がされている遺言書をうっかり開けてしまうことがあるかもしれません。
しかし、検認が必要な遺言書について、検認手続きを経ずに開封してしまった場合、ペナルティが科される可能性があります。
3-1.5万円以下の過料に科せられる可能性がある
自筆証書遺言を誤って検認前に開けてしまった場合は、5万円以下の過料に科される可能性があります。
- 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。(民法第1005条)
遺言書を発見した場合は、すぐに開封せず、まずは遺言書の種類について検討する必要があるといえるでしょう。
不安な場合は法律の専門家に相談することがおすすめです。
3-2.誤って開封した場合でも検認手続きは必要
発見した遺言書を誤って開封してしまった場合であっても、遺言書の効力が失われることはありませんので、その点はご安心ください。
また、誤って開けてしまった相続人についても、過料以外のペナルティが発生することはありません。
開封した場合でも、自筆証書遺言の原則に従って、検認手続きを進めるようにしましょう。
ただし、遺言書を偽造・変造したり、捨ててしまったりなどすると、相続欠格の事由に該当し、相続権を失う可能性があります。
3-3.封のない自筆証書遺言でも検認手続きは必要
自筆証書遺言に封がされておらず、内容が確認できる状態であっても、家庭裁判所での検認手続きは必要となります。
自筆証書遺言では、封筒に入っているなど、「封がされていること」は要件ではないため、そのほかの要件を満たしていれば封をされていない自筆証書遺言も法的に有効です。
ただし、封をしていない自筆証書遺言は書き換えがされたり、汚損したりするリスクが封をされている状態よりも高まりますので、遺言書を残す際は避けた方が無難といえるでしょう。
4.自筆証書遺言を発見した際に司法書士のサポートを受けるメリット
自筆証書遺言を発見した場合、遺言書の検認をする必要がありますが、家庭裁判所の提出書類を作成や、戸籍謄本類などの添付書類の収集は、不慣れな一般の方の場合、多くの時間を費やしてしまう可能性があります。
また、不備があれば、その都度修正や追加での資料収集などをしなければならず、時間と手間がより一層かかってしまうでしょう。
自筆証書遺言を発見した場合は、法律の専門家である司法書士に相談、依頼することでスムーズに手続きを進めることができます。
4-1.スムーズに遺言書の検認の手続きを進められる
司法書士へ遺言書の検認手続きを依頼することで、スムーズに検認を進められます。
司法書士は裁判所へ提出する書類の作成を代理して行うことができ、戸籍謄本類などの公的書類についても代理で収集が可能です。
平日、なかなか時間を取るのが難しい方でも、司法書士へ依頼すれば、必要な公的書類を集めてもらえ、そのほかにもさまざまな法的サポートが受けられます。
4-2.専門知識に基づいたアドバイスを受けられる
経験豊富な司法書士へ依頼することで、専門の法律知識に基づいたアドバイスを受けられます。
慣れない裁判所手続きについても流れを事前に教えてもらえるので、安心して手続きを進めることが可能です。
遺言書の検認当日にも、立会いを希望されれば同行し、遺言書の開封後に内容の有効性をすぐに検討することもできます。
また、遺言書の内容で遺産を分割するにあたり、適切な法的アドバイスを受けられる点も、司法書士へ依頼するメリットといえます。
4-3.検認後の手続きについても依頼できる
遺言書の検認後、内容にあわせた遺産の分配をする際に、相続登記や金融機関の解約手続きをしなければならない場合がほとんどでしょう。
司法書士は、相続登記・金融機関解約を代理して行えますので、検認後の相続に関する手続きも依頼することができます。
また、遺言書に含まれていない遺産があった場合など、相続人で遺産分割協議をする際にも遺産分割協議書といった書類の作成を依頼できます。
5.遺言書の開封は慎重に!見つけた場合は一度司法書士へ相談がおすすめです
遺言書は種類によって、すぐに開封ができるかどうかが異なります。
勝手に開封してしまうと5万円以下の過料が科されてしまう可能性があるため、遺言書を発見した場合は、すぐに封を開けて確認するのではなく、一旦法律の専門家である司法書士へ相談してみると安心です。
円滑に相続手続きを進めるためにも、また、故人の意思を尊重するためにも、遺言書の開封は慎重に行いましょう。
遺言書の検認手続きをされる際は、多くの経験がある「拓実リーガル司法書士法人」に一度ご相談ください。
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