その他企業法務
増資・新株発行
資金調達の手段として株式会社が新株発行をして資本金を増やすことを増資といいます。
発行した株式の数量及び資本金の額が増加するため、登記します。
金融機関から借り入れて資金を調達する場合には、その金融機関への返済義務や利息が生じますが、新株を発行して資金調達をする場合には株主への返済義務がないことが最大のメリットということができます。
また、資本金が増加することにより、すぐに倒産しない体力のある会社であるとの判断が働きますので、対外的な信用力につながります。
デメリットとしては、新株発行をすることで議決権が希薄化するという点が挙げられますが、新たに加入した株主の議決権を制限するかわりに優先的に剰余金を配当するような種類株式を発行することも可能です。
その他にも事業承継にあたり、算定した株価の低いうちに跡継ぎに株式を贈与したいが、当面は現役のままでいたいので実権は渡したくないといった悩みを抱える経営者様には、拒否権付種類株式(黄金株)をおすすめすることもあります。
この拒否権付種類株式(黄金株)とは、役員の選解任をはじめとした株主総会の決議事項の一部または全部において、通常の株主総会の他に、黄金株の株主(種類株主総会)の承認を必要とし、その株主が拒否権を発動すれば通常の株主総会の決議が通らなくなってしまう程に強力な株式です。(※1)
そのため、黄金株を1株だけ発行して、その他の普通株式は跡継ぎの方に贈与することで、実権を握ったまま事業を承継することが可能になりますが、あまりに強力な株式であるため、取り扱いには注意が必要となります。
剰余金の配当(会社法108条1項1号)
剰余金の配当局面において、他の種類の株式に優先して配当を受ける権利等を規定した株式です。
残余財産の分配(会社法108条1項2号)
会社の解散局面等で会社の保有する残余財産を分配する際に、優先して分配を受ける権利等を規定した株式です。
議決権制限種類株式(会社法108条1項3号)
株主総会の決議事項において議決権の一部または全部について行使を制限する株式です。議決権の行使を制限するかわりに剰余金の配当を増やす等の組み合わせで利用するケースが多く見受けられます。
譲渡制限種類株式(会社法108条1項4号)
株主が株式を譲渡するにあたり、取締役会や株主総会等の承認を必要とする株式です。上場企業以外のほぼ全ての会社で設定されています。
取得請求権付種類株式(会社法108条1項5号)
株主がその所有している株式の取得を会社に請求できる株式です。株主は取得の対価として予め定められた、金銭・その他の株式等を受け取ることができます。
取得条項付種類株式(会社法108条1項6号)
「会社が定める日の到来」等、一定の事由が生じることを条件に、会社が株主からその保有する株式を取得することができる株式です。その際、株主の同意や承諾は不要です。
全部取得条項付種類株式(会社法108条1項7号)
株主の保有する当該株式を株主総会の特別決議を経ることで、会社が取得することができる株式です。100%減資等の株主を総入れ替えするような場面で用いられることもあります。
拒否権付種類株式(会社法108条1項8号)
別名「黄金株」とも呼ばれ、株主総会の決議事項の一部もしくは全部において通常の株主総会の他に、当該種類株主の総会決議を必要とする定めのある株式です。
取締役・監査役選解任権付種類株式(会社法108条1項9号)
当該種類株主総会により取締役・監査役の選解任を行います。会社の経営に対する影響力が非常に強いため、公開会社等では設定することができません。
(※1)株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(会社法108条1項8号)